目が覚めると、そこは一面の泥沼だった。存在は死に、腐敗した景色が見渡す限り広がっている。生物は肉を剝がされてくすんだ白骨を露わにし、また、地上で名を知らない人間はいなかったほどの立派な人物も、最早かつての所業の要約でしかない。あらゆるものが鈍重になり、未来は確定した行動の繰り返しであるが故に、未来を語るものはいない。
死んだ世界を歩き続ける。きつい酒は心臓を焼き、言葉の燃え滓が口からこぼれ落ちる。誰もが多かれ少なかれ自身の悲しみを吐露することが良しとされ、この暗い地の底を表す名にふさわしい。一様に嘆き、今を憂い先を悲しみ、その乾杯は仲間の合図にして停止の号令となる。独房から監視塔に向かって祈りを捧げる囚人は光を迎えることすら能わず、監視を恐れるほかに何もできることはない。
しかし、あまりに多くの人口を抱えすぎたこの巨大な地底世界にあって、一人くらいは地をふんじばり空を睨みつけていても何ら不思議ではない。これは崇高で孤独な喜劇であるが、彼は最初の観客たちを忘れはしない。ここでは誰もが嘆いているが、笑っている者もいると知ったとき、己自身によってのみ成し遂げられる、燃え続ける雲に覆われた国においてただ一人の笑う者になるという決心が彼に二度目の命を呼び戻す。最も暗い場所にて投げかけられた燦曦によって再び立ち上がることができる。一度地に堕とされたとしても、輝ける太陽の王国を打ち建てるべく、彼は墓場から蘇った。彼の声は恐ろしいほどに残忍で揺るぎなく語り掛ける。いつまでそこに這いつくばっているつもりなのか? わたしはとうの昔に決めたのだ、悲しむことを定められたこの地底で、勝利の笑いを突きつけると! なにゆえ生き、死んだのか。どうして苦しむことなしにわたしの太陽を求められよう? そうだ、自分が自分である限り、この苦しみは続くのだ。だからといって、わたしであることをどうやって手放せるだろうか!
彼は歩みを止めることはない。彼の薔薇は寂れた大地に咲くには相応しくない。誓いは高らかに。「地獄は俺のもの」だ。